海外は「治安が悪くて危険」は本当か?「海外邦人援護統計」を見てわかった事実

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旅行や就業など渡航スタイルに関わらず、日本人が海外へ出るときの最大の不安は現地の治安状況。

一般的に「海外は治安が悪い」と考えられています。併せて交通事情も危険だと認識されていますよね。

海外で働くなんて話をすると、「危ないからやめておけ」とか「簡単に命落とすぞ」なんて極端な忠告をされることもあります。

多くの人が口にする「海外は治安が悪くて危険」というこの情報。何を根拠に語られているのでしょうか?

ぼく自身9年アジアで生活していましたが、治安や交通事情が原因で何らかの被害にあったことは一度もありません

もちろんぼくの経験が全てではないのですが、危険な目に遭っていない身としてはちょっと違和感を感じます。

そこで今回は外務省が毎年発行している「海外邦人援護統計」をベースに、本当に海外は治安が悪くて危険なのか考えてみたいと思います。

海外邦人援護統計

海外邦人援護統計とは、海外へ渡航した日本人が渡航先で何らかのトラブルに遭った際に、在外公館が援護した件数と人数をまとめた資料。

海外邦人援護統計 | 外務省

「海外へ渡航した日本人」には観光旅行、海外留学、海外赴任などが含まれ、「何らかのトラブル」とは事故や災害、傷害や窃盗などの犯罪被害などなど。

2014年の統計では、渡航者数1,6903,388人に対し援護人数は2724人。件数は18,123件。

およそ815人に1人の割合で海外渡航者が援護されています。

援護内容の内訳は以下の通り。

■事故・災害→345人(194件)
6割は「交通機関事故」で116件、次いで多いのは「レジャー・スポーツ事故」の43件。

■犯罪被害5,383人(5,040件)
邦人援護全体の約3割を占めています。そのうち「窃盗被害」が4,417人(4,140件)と最も多く、次いで多いのが「詐欺被害」429人(453件)、そして「強盗被害」248人(227件)。犯罪による死亡者は9名です。

■犯罪加害404人(378件)
犯罪は被害に遭うだけでなく加害者になるケースもあります。「出入国・査証関係犯罪」が115人(105件)と最多で、次いで「道路交通法違反」「傷害・暴行」「麻薬犯罪」となっています。

その他→14,592人(12,511件)
「その他」の中で一番多いのが「所在調査」5,222件。邦人援護全体でも最大の割合を占めています。裁判手続きや税の徴収などで利用されており、増加傾向にあるようです。海外に身を隠しちゃってる人が結構いるってことなんでしょうかね。

では、これら援護内容のうち「治安」に関係する「犯罪被害」について見ていきましょう。

治安に関する統計

犯罪被害に遭った海外邦人のうち、在留邦人は1,487人で短期滞在者は3,631人(不明が265人)。旅行や出張などの短期滞在者の方が多く被害に遭っていることがわかります。

被害内容の詳細は、先ほど紹介した内容も含め以下の通り。

● 窃盗→4,417

● 詐欺429

● 強盗・強奪248

● 傷害・暴行 105

● 脅迫・恐喝 →61人

● 強姦・強制猥褻 →29人

● 殺人 →13人

● 誘拐 →10人

● その他→44人

※それぞれ未遂も含む人数

犯罪被害による死者数は9名(殺人8名、強盗致死1名)。主な殺人事件はフィリピン、アメリカ、カナダで起きています。カナダって意外ですよね。治安が良いとされていますが、殺人事件が起きてるんですね。。

個人的には勝手な印象から南米あたりで殺人事件が起きてるんじゃ無いかと思っていたのですが、南米で邦人殺人事件は起きてないんですよね。

世界一安全な国は日本?治安のいい国ランキングTOP18 | Compathy Magazine

渡航者数1,6903,388人に対し犯罪被害者は5,383人なので、その割合はおよそ3,140人に1人

犯罪による死者はおよそ187万8,000人に1人の割合です。

エリア別被害状況

エリア別被害状況

エリア別に見てみると、犯罪被害が一番多いのは欧州の2,797人。次いでアジア1,366人、北米580人の順。

渡航者数はヨーロッパよりアジアの方が多いのですが、犯罪被害者はヨーロッパの方が多いんですよね。

(参考)各国・地域別 日本人訪問者数 | JNTO(PDF)

ヨーロッパでは窃盗被害の割合が高く(2,665人)、アジアは詐欺(320人)と傷害・暴行(50人)の割合が高いのが特徴です。

日本に比べ治安は悪いのか?

このように、海外では何らかの犯罪に巻き込まれる可能性があることが分かるのですが、それはすなわち治安が悪くて危険ということなんでしょうか?

日本に住んでいても当然犯罪に巻き込まれる可能性はあるわけです。

 そこで、前提条件が違うので難しいんですが日本との比較を強引にしてみたいと思います。

 海外邦人が遭遇するものと類似した日本の犯罪被害は以下のようなものが挙げられます。

● 窃盗(すり、ひったくり、置引き、空き巣、客室)→85,156件

● 詐欺→41,523

● 強盗・強奪→3,056件

● 傷害・暴行 →59,025件

● 脅迫・恐喝 →6,779

● 強姦・強制猥褻 →8,650

● 殺人 →1,054

● 誘拐・人身売買 198

トータル犯罪件数は205,441件

数字は政府統計の認知件数を使用しています。

(参照)平成26年1~12月犯罪統計【確定値】 訂正版(PDF)

これらは日本国内在住者の年間犯罪被害件数なので、同様に海外に在住する在留邦人との比較をしてみましょう。

 

海外在留邦人との比較

2014年の在留邦人はおよそ126万人。それに対し犯罪被害者は1,487人 なのでその確率は約1/847

一方日本の総人口およそ12,700万人に対し犯罪被害は205,441件。約1/618の確率です。

日本の犯罪に関しては人数ではなく件数のデータしかないので正確な比較にはなりませんが、一般的に件数より人数の方が多くなるでしょうし、この数字だけ見れば日本の方が犯罪に遭う確率が高いことがわかります。

(参考:過去エントリー)海外就職希望者のための「海外在留邦人数調査統計」まとめ

 

海外短期滞在者との比較

次に在留邦人以外の短期滞在者(旅行者・出張者等)との比較をしてみます。

1,564万人の短期滞在者(海外渡航者数ー在留邦人数)のうち犯罪被害人数は3,631人。

短期滞在者を全て旅行者と考えた場合、旅行者の平均滞在日数は8日間程度なので、その間に何らかの犯罪被害に遭う割合は1/4307

(参考)国土交通省発表資料より

 日本の犯罪被害は8日間でおよそ4,500件(205,441件÷365×8)起こるとした場合、犯罪遭遇率は1/28222

こちらは圧倒的に日本の方が確率が低くなっています。

もちろん、短期の海外旅行と国内定住でとは条件が異なる点が多いので単純に比較できるものでは無いんですけどね。

交通事故による死亡事故の割合は?

交通渋滞

海外に関して、治安以外にも交通事情の危険性が語られることが良くあります。そこで交通事故の被害状況についても見てみましょう。

2014年に交通事故に遭った海外邦人は165人(116件)。うち死亡者は26人。

交通事故に関しては在留邦人と短期滞在が区別されたデータがなかったので、仮に死亡者全てが短期滞在者とした場合、8日間の滞在中におよそ60万1,500人に1人が交通事故死していると考えられます。

一方、同年の日本の交通事故死者数は4,113人。8日間で90人死亡していると考えると(1日平均11.27人)、およそ141万1,000人に1人の割合。

実際には在留邦人の事故もあるでしょうから正確ではないんですが、この数字だけで判断するなら海外の方が死亡事故遭遇率が高いと言えます。

ただ、交通事故件数は海外邦人が116件に対し日本は573,465件。圧倒的に日本の方が多いことがわかります。

まあアジアではちょっとした接触くらいで警察や在外公館に届けたりしませんからね。。実際には軽い事故なら数字の何倍も起きているでしょう。なので116件という数字はそれなりの規模の事故であると考えられます。

だとしても交通事故件数少ないですよね。これはぼくもかなり意外でした。

まとめると…

以上をまとめると次のようになります。

援護される海外渡航者は815人に1人

何らかの犯罪被害に遭う海外渡航者は3,140人に1人

犯罪により死亡する海外渡航者は187万8,000人に1人

 

海外在留邦人が犯罪被害に遭う確率は1/847 

日本に住む日本人が犯罪被害(海外で遭遇するのと同じ類の)に遭う確率は1/618

 

海外短期滞在者が8日間の滞在で犯罪被害に遭う確率は1/4307

日本に住む日本人が8日間で犯罪被害に遭う確率は1/28222

 

短期滞在者は8日間の滞在中に60万1,500人に1人の割合で交通事故死している

日本に住む日本人は8日間で141万1,000人に1人の割合で交通事故死している

交通事故件数は海外邦人116件に対し日本は57万3,465件

※⑥〜⑨以外はすべて1年間の数字

わかったこと

それでは、以上の結果を見て分かった事実を7点あげてみます。

❶海外滞在中に事故や犯罪で命を落とす可能性はとても低い

❷ただ、治安が良いとされている国でも殺人事件は起こるし、逆に治安が悪そうな国で殺人が無いこともある。つまりイメージはあてにならない

❸窃盗被害に遭いやすいという点では、アジアよりヨーロッパの方が治安が悪い

❹海外在留邦人より短期滞在者(旅行者・出張者等)の方が、犯罪被害に遭いやすい

❺在留邦人は日本に住むより犯罪に遭いにくいのかもしれない

❻短期滞在者は日本にいるときより犯罪に遭う確率が高い

❼交通死亡事故に遭う確率は日本より海外にいる方が高いが、交通事故件数は日本の方が圧倒的に多い

海外在留邦人が犯罪に遭いにくい理由は?

今回ぼくが一番注目したのは上記の「❺」。海外在留邦人の犯罪遭遇率が低いという点です。

「旅行ならまだしも、住むとなれば危険な目ばかりに遭うんじゃないか」と思う人も少なくないでしょうが、どうやらそうでは無いみたいです。

なぜなんでしょうか。

定住目的で海外に渡る日本人は、ほとんどの場合何らかのコミュニティに属することになります。会社だったり学校だったり。

そのコミュニティにはすでに長期で生活している日本人や現地のスタッフが必ずいるので、彼らからアドバイスをもらったり行動を共にすることになります。

そうするうちに危険なポイントがわかるようになり振る舞いが変わってきます。

また、外国人が多く住むエリアはそもそもセキュリティのレベルが高い場合が多いんです。

これらのことが犯罪遭遇率を低下させていると考えられます。

なので、海外で危険な目に合うかどうかは、その国の治安状況よりも本人の行動の仕方がポイントになっていると言えるでしょう。その行動を親身にサポートしてくれる人や住居を最初から確保できるという点からも、海外就職や留学などの在住を目的とした渡航は想像以上に安全だと考えて良さそうです。

 さいごに

いかがでしたか?

今回ご紹介したのは「海外邦人援護統計」に基づいた内容なので、あくまで在外公館が把握している数字がベースになっています。

実際にはもっと多くの事件事故が発生しているでしょうし泣き寝入りしている海外邦人も多いのが事実です。ぼくの身近にもひったくりや詐欺の被害(未遂)にあった知人もいますしね。

また、今回は掘り下げていませんが国による違いも当然あります。

日本との比較については、日本が「超高齢社会」であるという点を考慮していないので、正確な比較とは言えません。交通事故であれ窃盗や詐欺であれ、日本では高齢者が被害者になっている割合が高いでしょう。一方で海外法人のボリュームゾーンは3040代。 

そういった現状も踏まえた上でご紹介した数字を参考にしていただき、安全か危険か考えていただければと思います。

なんでもそうですが、漠然とした先入観で判断しないでデータに当たったり経験者に話を聞くなどして、事実を確認する必要があるでしょう。

特に海外事情に関しては、先入観や偏ったイメージで語られることが多々あるので気をつけたいですね。

海外で安全に過ごすためには、治安の良し悪しよりも、自分の頭で考えて適切な行動ができるかどうかがポイントになるんじゃないでしょうか。

それでは!

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